どんな手術をしても完治が不可能な緑内障という病気。
現状は点眼や手術でなんとか視力の確保を続けるという治療になります。
それでも視力を失ってしまい、緑内障の末期になると、
義眼という手術が選択されることがあります。
義眼というとパイレーツオブカリビアンの下っ端の海賊がしていたような
頭を叩くと取れるようなものをイメージされる方が多いみたいですが、
犬の義眼は眼の中身を取り出して代わりに
「シリコンボール」を挿入する手術になります。
(ちなみに猫は眼内に異物を入れると腫瘍発生の可能性があるので、
基本的には眼球摘出が第一選択です。)
義眼をいれた症例。
どうでしょうか。
意外とわからないのではないでしょうか。
飼い主様も散歩などで「眼どうしたの?」
と言われなくなったと喜ばれることが多いです。
義眼側
正常側
フラッシュで写真を撮ると違いが分かるくらいでしょうか。
普段の生活ではほとんど気になりません。
義眼挿入術の目的
では義眼のメリットは見た目だけなのでしょうか。
実はそれだけではありません。
- 見た目や眼球の大きさの改善。
- 緑内障の目薬が必要なくなる。
- 緑内障による犬の痛みをなくしてあげられる。
- 最終的な費用は手術の方が安い
特に3番は重要で、緑内障になると大小様々な痛みが発生しています。
痛みが慢性化すると飼い主からは見た目では
痛いのかどうかわかりにくいのですが、
義眼にすると食欲が増したり、動きが良くなった、と言われますので、
やはり実際には痛みがあるものと考えられています。
また、費用的にもメリットがあります。
緑内障は基本的に治らない病気ですので、点眼治療を続ける場合、
ずっと目薬を続けることになります。
緑内障の目薬は他の目薬に比べると高価なので、
目薬が必要なくなることは長期的に見ると費用的なメリットが出てきます。
義眼のデメリット
- 飼い主の心理的問題。
- 一時的に費用がかかる。
- 麻酔リスク。
- 手術後にドライアイが発生する可能性。
緑内障末期になって手術を提案した場合に一番ネックとなるのは
「愛犬の目を取る」という飼い主様の心理です。
実際には眼を取り除くわけではありませんが、義眼という手術は
飼い主様が積極的に眼をダメにするという印象が強いらしく、
日本人には受け入れずらいようです。
結果的には愛犬の痛みや点眼の煩わしさがなくなるので、
手術後に後悔している飼い主様はお会いしたことがありません。
あとは、年齢的に高齢であることも多く、
麻酔下での手術を希望されない場合もあります。
その場合には眼が大きくなってしまう牛眼にならないことを
祈りながら、点眼治療を継続します。
また、義眼は眼球摘出とは違い、眼が残りますので、
義眼挿入後に涙の量が減ったりするとドライアイや結膜炎などの
眼の病気になることもあります。
そのため、義眼を考える場合には眼球摘出と比較してどちらがいいのか
考える必要があります。
見た目を気にしない、もう目薬全てやりたくない、という人は
眼球摘出を考えてもいいのかもしれませんね。
もちろん、緑内障が発症した早期に診断治療を開始して、
視力を維持していく方が理想的です。
気になる方は緑内障の記事を参考に、
疑わしい場合には眼圧測定をお勧めします。
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先生にうちのこのめをみてもらいたい
米丸かおるさん
ありがとうございます。
予約や紹介性ではありませんので、診察にいらしていただければ診ることができます。
急に失礼します。一週間前怪我で、義眼の手術をうけたのですが、角膜がなくなってしまっている状態で、本日抜歯をしたところ2時間後にはシリコンボールがとれてしまいました。これはもう眼球摘出するしかないのでしょうか?どうしても他の方法が知りたいです。至急お返事お待ちしてます。
河村彩花さん
返信遅くなりました。
基本的には角膜がだめになってしまった場合には義眼手術は適応外になってきます。
義眼手術をされた後に穴が開いているということなので、眼内組織も摘出した後だと思いますので、角膜移植もなかなか難しいかと思われます。
はじめまして。突然のコメント失礼いたします。
愛犬が義眼手術をしたのですが、膿が出て大変痛がっている様子のため
シリコンボールを取り出し、洗浄を続けています。
この場合、落ち着けば治療が終了ということになるのでしょうか。
今後、シリコンボールの空間はどのようになっていくのでしょうか。
それともいずれ、眼球摘出術が再度必要となるのでしょうか。
医師のはっきり説明がほとんどないまま不安を感じています。
さささん
はじめまして、コメントありがとうございます。
返信遅くなり申し訳ありません。
義眼手術後の感染ですね。
洗浄と抗生剤の治療で膿が引いてくれば治療は終了になると思います。
眼球内はおそらく眼球瘻というつぶれた小さな眼球が残ると思います。
感染が続くなど、状況によっては眼球摘出が必要となります。