こんにちは!
くじら獣医です。
今回は見た目で飼い主さんでも分かる病気のご紹介です。
この症例は1ヶ月前から目頭のところに
赤い塊ができてしまった子です。
眼の中の瞬膜(第三眼瞼)と呼ばれる犬・猫にある
特殊な部分に塊があります。
血の涙が出てしまっているということで
心配して来院されました。
紹介元の先生のところでは細胞の検査を送っていて
炎症疑いとのことでした。
炎症も可能性がありますが、
わんちゃんの年齢や塊の大きくなるスピードから
腫瘍も考えなければいけません。
瞬膜にはまれですが、腫瘍ができることがあります。
特に怖いのは悪性腫瘍です。
今回のこの子も見た目が血管肉腫という悪性腫瘍と
類似しているので慎重な判断が必要でした。
ただ、血管肉腫と類似した腫瘍に血管腫というものもあり、
こちらは良性腫瘍です。
良性か悪性かは取ってみないとわからないので、
飼い主さんと慎重に話し合いました。
幸い瞬膜の裏側にまで腫瘍が進行していないようで、
良性であれば瞬膜の表側の一部を切り取るだけで
瞬膜の形を変えずに済みそうでした。
一部を切り取るだけであれば瞬膜にある
涙を分泌する「瞬膜線」を切り取らずに済みます。
悪性を疑う場合には瞬膜線も含めて全部を切り取ります。
腫瘍は取りきれますが、術後に涙の分泌が減ってしまう
ドライアイなどの合併症のリスクがありました。
飼い主さんと相談した結果、
万が一悪性腫瘍だった場合のことも考え、
瞬膜全体の切除を行うことにしました。
<術前>
<術後>
瞬膜を中にある軟骨・瞬膜線を含めて切り取りました。
そのままだと中の脂肪が出てきてしまうので
細い溶ける糸で縫合しました。
切除した瞬膜
手術後、切除した塊を病理検査に送りました。
結果は結膜血管腫、良性の腫瘍でした。
切除後の経過観察
現在のところ見た目にも問題なく、
飼い主さんの心配していた出血も無くなりました。
再発の経過観察は必要ですが、
病理検査の結果が良性でしたので、
基本的には心配いらないと思います。
瞬膜にできる腫瘍は珍しいですが、
飼い主さんが自分で見つけやすい腫瘍でもあるので、
早い段階で見つかることが多い腫瘍ですね。
※本ブログは飼い主さん向けに素人でもわかりやすいように
言葉を噛み砕いて記載しております。
医学的に若干言葉遣いがおかしい部分があるとは
思いますが、目をつぶっていただけると幸いです。
おかしな部分があったりわからないことがあれば
コメント欄でご指摘いただけるとすごく嬉しいです。