犬の水晶体前方脱臼。

先週は白内障手術2件、水晶体脱臼1件と通常より手術多めでした。
以前にもこちらのブログで何度か取り上げた水晶体脱臼ですが、
他の動物病院からの紹介症例では、手術不適応であることも多かったのですが、
今回の症例は早めに紹介いただいたので、視力維持ができそうです。

 

水晶体前方脱臼の手術はとにかく早く!

基本的に水晶体前方脱臼は緊急疾患になります。
前方脱臼・後方脱臼についてはこちら
脱臼したその日に手術をしたい病気です。
理由としては水晶体前方脱臼は「痛い!」のです。
ほとんどの症例は食欲不振、元気消失などの全身症状を伴ってやってきます。
逆に全身症状がない症例は経験上慢性(長期間)のことが多く、
すでに緑内障やその予備軍になってることが多いです。

水晶体前方脱臼が起こり、水晶体が前方に移動すると
水晶体が瞳孔に触れることによりまず痛みが発生します。
(人の白内障手術では手術中に瞳孔に触ると患者が激しく痛がるので
眼内の麻酔を使わなければ禁忌とされるほど)

その状態が持続すると、ぶどう膜炎が発生し、
瞳孔と水晶体の癒着に発展します。
また、水晶体の後ろ側にあるゼリー状の硝子体の脱出や
瞳孔の癒着による瞳孔ブロックにより緑内障に進行していきます。
ここまで進行してしまうと、水晶体を摘出しての治療のメリットは
ほとんどなくなってしまうので、眼球摘出やシリコンボールによる義眼といった
眼を温存しない手術が選択肢になってしまいます。

手術をする人間としてはこうなる前に紹介していただいた方が
手術をするメリットが大きいと感じています。

脱臼して時間が経った症例
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もっと時間の経った別の症例
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ここまで進行してしまうと治療のしようがありません。。。
が、症例としてくる半分はこの状態だったりします。。。

 

今回の水晶体脱臼は

今回の症例では12時方向に硝子体ヘルニアを起こしており、
これが瞳孔ブロックの原因となり、緑内障になっていました。
(眼圧60mmHg!!)
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手術後
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手術後、今のところ眼圧10-15mmHgの範囲に落ち着いてくれています。
脱臼後数日経っていたこともあり、瞳孔の形が変わってしまっていたのと、
角膜の混濁が出てしまいました。

手術前は食欲不振と右眼のしょぼつきがひどかったのですが、
どちらも手術後から改善しました。
今の所弱視ではありますが、視力も維持できているようです。
あとは緑内障が再発しないように注意深く経過観察していきます。

 

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